硬質小麦と軟質小麦
 小麦は、粒の硬さから硬質小麦と軟質小麦に区別できます。両者の間には、粉粒子の粗さ(粒度)や水分の吸収量にも違いがあります。
 小麦の粒は、いくつもの細胞からできています。細胞の中にはデンプン粒がぎっしり詰まっており、タンパク質、その他の物質がデンプン粒とデンプン粒の隙間を埋めています。

 硬質小麦の粒は、デンプン粒とその間に詰まっている物質とが、砂利とセメントの関係に似て、固く密着しています。このため、粒は硬く、粉にすると、1つ1つのデンプン粒がばらけることなく、いくつか固まったまま、大きな岩くずのような粗い粉になります。このことを「小麦粉の粒度が大きい」といいます。また、硬質小麦を粉にした場合の破砕面のデンプン粒は、一般的な製粉操作においてと同様に傷つきますが、傷ついたデンプン粒は水をよく吸うため、硬質小麦の粉は、軟質小麦の粉より多くの水を吸うという特徴があります。さらに、小麦粉の粒度とタンパク質含量の間には正の相関関係があることが分かっています。以上のことから、硬質小麦の特徴として、粒が硬いことの他に、粉の粒度が大きく・吸水性が高く・タンパク質含量が多いことがあげられます。パン用の強力粉や中華麺用の準強力粉の製造には硬質小麦が使われます。

 軟質小麦の粒の構造は硬質小麦とほぼ同じですが、軟質小麦のデンプン粒の表面には、くっつくのを妨げる物質(フライアビリン:分子量15kDaのタンパク質)があることが分かっています。このため、軟質小麦のデンプン粒とその間の物質は、くっつかない状態で細胞中に詰まっているといえます。そのために小麦粒はもろく、粉にするとデンプン粒が1つ1つバラバラにほぼ無傷で分離されます。このため、軟質小麦の粉は細かく(粒度が低く)、水分を多く吸うことができないという特徴があります。なお、軟質小麦品種は、一般にタンパク質含量が硬質小麦品種より低いのですが、例外もあり、硬質小麦品種並みに高い品種も知られています。薄力粉や中力粉は軟質小麦を製粉して得られます。

※「小麦の強力粉・準強力粉・中力粉・薄力粉」の項参照