生物多様性
「生物多様性」(Biodiversity)とは、生きものの「個性」と「つながり」です。地球上の生きものは、様々な環境に適応して進化し、3,000万種ともいわれる多様な生きものが生まれました(環境省「生物多様性」のページから)。このように生物が多様に存在することを「生物多様性」と いいます。
  1993年12月に発効した「生物多様性条約」の第2条(用語)では、“「生物多様性」とは、すべての生物(陸上生態系、海洋その他の水界生態系、これらが複合した生態系その他生息又は生育の場のいかんを問わない。)の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む”と書かれています。
 つまり、生物多様性には、@生態系の多様性(森林、里地里山、河川、湿原、干潟、サンゴ礁など色々なタイプの自然があること)、A種の多様性(動植物から細菌などの微生物にいたるまで、いろいろな生きものがいること)、B遺伝子の多様性(同じ種でも異なる遺伝子を持つことにより、形や模様、生態などに多様な個性があること)の3つのレベルの多様性があります。

 こうした生物の多様性は、@酸素の供給、気温・湿度の調整、水や栄養塩の循環、豊かな土壌など、すべての生命の存立基盤、A衣食住、医薬品などの暮らしの基盤、B豊かな文化の根源、といったたくさんの恵みをもたらしてくれています。こうした、たくさんの恵みによって、私たち人間を含む生きものの「いのち」と「暮らし」が支えられています。

 しかし今、日本の生物多様性に危機がせまっています。2007年閣議決定された「生物多様性国家戦略2012−2020」生物多様性国家戦略2012-2020」では、わが国の生物多様性の危機の構造を次の4つに分類しています。
@第1の危機:人間活動ないし開発が直接的にもたらす生物種の減少、絶滅、あるいは生態系の破壊、分断、劣化を通じた生息・生育環境の破壊です。いわゆる自然破壊がこれに当たります。
A第2の危機:里地里山など自然に対する人間の継続的な一定の働きかけによって維持されてきた環境が、生活様式・産業構造の変化、高齢化の進行など社会・経済状況の変化に伴って変化し、その環境に依存していた種の生息・生育環境が失われつつあることです。
B第3の危機:人間により持ち込まれたものによる生態系のかく乱です。オオクチバス(ブラックバス)やアライグマなど外来種だけでなく、人間が作り出した化学物質などによる影響も含まれます。
C第4の危機:地球温暖化による危機は、気温上昇による生息・生育環境の変化で、地球規模で生物多様性に影響を与える大きな課題です。
 こうした4つの危機によって、日本の野生動植物の約3割が絶滅の危機に瀕しているといわれています。

生物多様性は人類の生存を支え、人類に様々な恵みをもたらすものです。生物に国境はな く、日本だけで生物多様性を保存しても十分ではありません。世界全体でこの問題に取り組むことが重要です。このため、1992年5月に「生物多様性条約」 がつくられました。2008年10月現在、日本を含む190ヶ国とECがこの条約に入り、世界の生物多様性を保全するための具体的な取組が検討されていま す。
  この条約には、先進国の資金により開発途上国の取組を支援する資金援助の仕組みと、先進国の技術を開発途上国に提供する技術協力の仕組みがあり、経済的・ 技術的な理由から生物多様性の保全と持続可能な利用のための取組が十分でない開発途上国に対する支援が行われることになっています。
  また、生物多様性に関する情報交換や調査研究を各国が協力して行うことになっています(「生物多様性条約」より)。