| リジェネラティブ農業(環境再生型農業) |
| リジェネラティブ農業とは、一般的に、土壌の健全性を重視し、明白な農学的および科学的原則に基づく持続可能な農業生産システムを指します(米国議会調査局、2025)。リジェネラティブという言葉は1980 年代初頭に初めて登場します。アメリカのロデイル研究所の二代目会長ロバート・ロデイル(Robert Rodale)が、サステナブル(持続可能)という言葉に対して、「今の疲弊した土壌の状態を維持してどうするのか?悪い状態を維持するのではなく、回復(再生)させる必要がある」としてこの言葉を使い始めたといわれています。 アメリカノースダコタ州で2400 ヘクタールの農場を営むゲイブ・ブラウン(Gabe Brown)は、自身の著書『Dirt to Soil』(邦訳:『土を育てる』NHK 出版)の中で、健康な土壌を再生し、持続可能な農業を実現するための「環境再生型農業(リジェネラティブ農業)の5 つの原則(後に次の6 つの原則)を提唱しています。 1.土をかき乱さない(least disturbance):耕起や化学肥料・農薬の使用を最小限に抑えます。土を耕すと土壌構造が壊れ、微生物の生息環境が失われてしまうため、不耕起栽培などが推奨されます。 2.土(地表)を覆う(soil armor):土を裸にせず、常に作物や残渣で覆っておくことです。これにより、土壌の浸食を防ぎ、温度を一定に保ち、水分の蒸発を抑えることができます。 3.多様性を高める((increase biodiversity):単一栽培(モノカルチャー)を避け、多くの植物を育てることです。多様な植物は、多様な微生物を呼び込み、生態系をより強固で回復力のあるものにします。 4.生きた根を保つ(living root):収穫後も次の作物を植えるか、カバークロップ(緑肥)を利用して一年中土の中に生きた根がある状態にします。根から分泌される糖分等が微生物の餌となり、土壌を活性化させます。 5.動物を組み込む(animal integration):植物と動物は本来、セットで進化してきました。適切に管理された放牧(ローテーション放牧など)によって家畜を農地に組み込むことで、排泄物が肥料となり、土壌の炭素循環が劇的に加速します。 6.背景(context)の理解:自分の土地の気候、土壌、歴史、そして自分自身の目的や経済状況を正しく把握することです。画一的な正解はなく、「自分の場所では何がうまくいくか」を考える出発点となります。 これらの原則を組み合わせることで、土壌はより多くの炭素を貯留し、水を保持できるようになります。結果として、肥料や農薬への依存度を下げながら、収益性と環境再生を両立させることが可能になる、という考えです。 よく似た言葉に、リジェネラティブ有機農業(Regenerative Organic)というのがあります。これは、リジェネラティブ(環境再生)に加えて、農薬・化学肥料を一切使わない「有機(オーガニック)」であることを前提とした上で、さらに土壌ケアや動物福祉、労働者の公平性まで求める最高レベルの基準で、「RO 認証(Regenerative Organic Certified)」という国際的な認証も存在します。 |