「みどりの食料システム戦略」が目指している
「有機農業」
  「『みどりの食料システム戦略』KPI2030年目標の設定について」(令和4年6月)において農林水産省は、「2050年までに、耕地面積に占める有機農業※の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大することを目指す。(※国際的に行われている有機農業)」としています。
 ここで、わざわざ注釈をつけている“国際的に行われている有機農業”とは何でしょうか。農水省生産局の「有機農業関連情報」のページには、「消費者の健康の促進、食品の公正な貿易の確保等を目的として、1963年にFAO及びWHOにより設置された国際的な政府機関」である「コーデックス委員会が作成したガイドラインにおいては、有機農業は、生物の多様性、生物的環境及び土壌の生物活性等、農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システムである、と規定されている」ことが書かれています。前後の文脈から考えると、これが“国際的に行われている有機農業”の定義であるといえます。

 コーデックス委員会のガイドラインには、続けて次のように書かれています。
 地域によってはその地域に応じた制度が必要であることを考慮しつつ、非農業由来の資材を使用するよりも栽培管理方法の利用を重視する。これは、同システムの枠組みにおいて特有の機能を発揮させるために、化学合成資材を使用することなく、可能な限り、耕種的、生物的及び物理的な手法を用いることによって達成される。有機生産システムは、以下を目的としている。
 a)システム全体において生物の多様性を向上させる
 b)土壌の生物活性を強化する
 c)長期的な土壌の肥沃化を維持する
 d)土地に養分を補給するために動植物由来の廃棄物を再利用し、再生不能資源の使用を最小限に抑える
 e)地域で確定された農業システムの再生可能な資源に依拠する
 f)土壌、水及び大気の健全な利用を促進するとともに、農作業に起因し得るあらゆる形態の汚染を最小限に抑える
 g)あらゆる段階において農産物の有機性及び不可欠な品質を維持するために、特に加工方法に慎重を期して農産物を扱う
 h)土地の履歴並びに生産される作物及び家畜の種類等、現場特有の要因により決定される、適切な長さの転換期間を経て有機農業を既存の農場において確立する

 以上のように、国際的に行われている「有機農業」は、単に「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないこと」にとどまらず、土壌の健全性、生物の多様性を促進、強化するために、観察と生態的な発想に基づいて、自然の循環に従った、それぞれの地域に応じた農業を行う、ということのように思われます。